2016.12.29(金)
お茶席では12月に「無事」や「無事是貴人」の掛け軸が使われます。
1年を無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを表し、
無事に新年を迎えられますようにという願いをこめて。
何かと慌ただしく過ぎてしまう年末に、「無事」の掛け軸を見ることで、「ああ、今年も1年が終わるんだな」と、一瞬立ち止まって実感するひとときです。
しかし、禅語としての本来の意味は、「無事」とは「平穏無事」「無病息災」とは異なります。
「無事是貴人」という言葉は臨済宗の祖である臨済禅師の言葉をまとめた「臨済録」という書物にあります。
これは放てば手に満てり。
求心やむところ、即ち無事。
手放せば、手にすることができる。
求める心をなくせば、無事の境地に達することができる。
無事これ貴人。
ただ造作することなかれ。
ただこれ平常なり。
外に向かって傍家に求過して、脚手にもとめんと擬す。
錯りおわれり。
無事であることが貴い。
作為せず、ただ、あるがままに。
それを当然にやることが平常であり
外に向かって何かを求めようとしてはならない。
「無事」とは作為せず、無造作(あるがまま)であること。
求めなくてもよいことに気づいた、安らぎの境地のこと。
無事とは、そんな意味だそうです。
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